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麗羅の館XLⅤ


第三話:今泉陽菜
27

アタシを乗せた車は都心からやや離れ、高い塀に囲まれ、その上に有刺鉄線を張り巡らせた広い屋敷の中へと入っていった。
あの “麗羅の館” も広いと感じたがここは更に広かった。
頑丈そうな門扉を潜ると分かる、あの鬱蒼とした木々は変わらないが、建物が見えるまで数分の時間を要したことからこの屋敷の大きさが分かる。

見えてきた建物の周りには広々とした駐車場があり、各駐車スペースには黒塗りの高級外車が立ち並び、その異様感を漂わせていた。
中には白、赤、シルバーといった色も見えるがそれらの多くは高級外車のスポーツカーであり、一見してその筋に者の車と分かる。
そして正門らしきところには屈強の青年が立った居て、ここがこの国の裏世界の総本山であることを物語っていた。

正門が開けられ、中に通される際、掛けられた言葉が『姐さん、長い間お待ち申しておりました』置いう挨拶だった。
『姐さん?・・・』
そうか・・・ここではアタシ “姐さん” になるのか・・・
アタシのここまでのいきさつを知っているのか?

アタシは世間一般的にいえば、単にGIDで、いわば変態的にみられる立場なのだ、ここで “姐” としての行動がとれるのかという不安も湧いてきたのだった。
ただ単に気の向くままに、 “ハイテーンの格好していればいい” というような世界ではない筈だ、それなりの格好、それなりの態度をしなければ横田の顔に泥を塗る結果になるとも限らない。
アタシはそんなことを思いながら正門をくぐったのだった。

中の一階には百席はあろうかと思われる机が立ち並び、まるで大企業の事務所だった、そしてさらにその机のそばに数々の男たちが立ちアタシのほうを向いて挨拶をする。

『お帰りなさいませ、姐さん!』

一同が声を合わせた挨拶にアタシは恥かしさに顔を赤らめ、下を向いたまま上の階へと案内されていったのだった。

『アニキィ・・・めっちゃ・・可愛い姐さんですね・・』
『ああ・・・俺たちのアイドル、マドンナさ・・・だがなぁ・・声を掛けちゃあなんねえぞ・・・掛けられるのを待つんだ・・・手柄を立ててな・・・』
『・・・手柄?・・・』
『組の・・・会社の利益になるようなことすればいいんだ』
『へい!・・・頑張りやす・・』
そんなささやきがアタシの背中の後ろから聞こえてくる。

二階には三十数席に机があり、広い空間を持っていた、ここでも一同の声を合わせた挨拶を受けるのだった。
さらに上の階に上り、三階に到着する、途中、ヒラヒラ超ミニスカートのアタシはハンドバックでお尻を隠すことを反射的に行っていた。
女の子があるが故の自己防衛手段だった、この自己防衛手段は裕美さんの教育の賜物だった。

三階はすべてが個室になっていた、向かい合う部屋の真ん中の廊下を歩き、奥にある大きな部屋へと導かれた行った。
アタシをここまで連れてきて、各階を案内するかのように歩いてきた男性が部屋のドアーをノックする。
“コンコン”というノックの後、“はいれ!”という言葉が聞こえてくる。

開けられた扉の向こうには、見慣れた懐かしい顔と、その周りを取り囲む厳つい顔の男たちが数十人立ち並んでいた。
「「姐さん、お帰りなさい。」」

声を揃えた野太い声の挨拶がアタシを恐縮させる。
と同時に懐かし顔がアタシに近寄り、
「よく戻ってきてくれた・・・陽菜・・・あの時、別れ際に変なことを口走ったが・・・兎に角、戻ってきてくれてたんだな」
「・・・アタシは・・・貴方に頼るしかないんです・・・貴方が“死ね”といえば死ぬしかないんです・・・アタシは貴方の所有物なんです・・・」
陽菜・・・それは違うぞ・・・俺はお前を女として・・・この話は後でしよう・・・下の者が居る・・・俺たちの部屋へ案内させるから・・・あとで俺も用を済ませたら行くから・・・」
「・・・はい・・・」

四階、五階、六階は独身の組員の部屋だった、各フロアー、三十部屋ある。
七階、八階、九階は十五部屋あり、既婚者の、中には子供もいる家庭もある。
そして十階はその子供たちの大きな遊び場になっていた。
そのフロアーの奥には教育室もある、ここで子供たちにこれからの自分たちの生き方を教えるのだろうか?

さらに十一階は武闘のフロアーになっていた。
格闘を教え、戦闘員を育てる部屋になっていた。

十二階は宿泊する人たちの部屋が立ち並ぶ。

十三階は倉庫だった、武器、書類等が仕舞い込んである。
また、一階、二階からの直行エレベーターもあり、戦闘有事には各末端の組員が武器を取りに来る。

その他にアタシは見ていなかったが地下には横田さん専用の駐車場があり、高級外車が立ち並んでいるという、主にスポーツカーらしい、横田さんが自分で運転するらしい。

地下二階はこの館の監視ルーム、それぞれに配置された監視カメラのモニターがここで見られる。
勿論、常時、警備の人間がいる。

そして最上階、十四階、ここが組長、いや社長・横田さんの私室だった、つまりアタシの部屋もある。
一つ一つの部屋の装飾が絢爛豪華でまるで高級ホテルを思わせていた。
リビング、応接室、寝室、横田さんの部屋、トイレ、浴室と案内され、一線を画してメイドさんの部屋もあった。
そして二人の可愛いメイドさんを紹介される。

“メイドさん?・・・うわっ、可愛い!・・・もしかして・・・夜伽も?・・・”

そんな恐れもある可愛い二人だった。

アタシは“陽菜の部屋”に通され、少し戸惑いを感じている。
あの “陽菜” が使っていた部屋らしいが、あまりに少女じみていた。
アタシの女の子歴はまだ二、三年だ、それにまだ男の記憶も残っている。

“う~~ん、女の子の部屋・・・だわ・・・アタシも男の子を吹き飛ばさなくっちゃあぁ・・・”

アタシは探索するかのように各部屋を見て回った。
まず、台所・・・アタシの主戦場になる場所だ。
大きい・・・だが使い勝手のよさそうな台所だった。
またこの大きさならホームパーティの料理も作れそうだ、何よりも造りがプロ用にでもなっているかのように、しっかりとした器具だった。

また食べる部屋は別で、それぞれ人数に合わせた部屋が用意されている。
二人用、四人用、六人用・・・すべてが偶数の人数だった、そして最後にパーティ用の部屋もある。

ここは日本の裏社会、極道の総本山だということを改めて思い知らされたアタシだった。

最後に寝室、アタシたちの愛の巣だ・・・まだ愛の巣というには早いかもしれないが・・・
ここでアタシは横田さんに慰みを受けるのだ、夫婦という名のもとに。

荘厳な造りだった、高級ホテルでもお目に掛かれないような部屋だった。
ここでアタシは彼の、横田さんの精を受け取るのかと思うと身震いがする。
横田さんにはすでに “陽菜” との子供、“菜穂ちゃん”がいる。
だからアタシに精の注入などないかもしれない、だけど、今こうして女の子になった以上、一度は子供を産んでみたいという衝動に駆られていた。

夕方近くになり、そろそろ夕飯の支度を、と思い台所に立ってみた。
綺麗にかたずけられている、台所を見れば家の中が分かる。
昼間、各部屋を見て感じていた、どの部屋も綺麗に掃除してあったのだ。

そのうち二人のメイドがぺちゃくちゃと話しながら歩いてくる、どちらもまだ若い、二十歳くらいだろうか。
台所に入り、アタシの姿を見ると両手をお腹に当て、深々とお辞儀をするのだった。

「お帰りなさいませ、奥様。今から夕飯の支度をいたしますのであちらのリビングのほうでお待ちくださいませ」
「・・・お・・奥様は・・・」
「まだ籍は入れていないと伺っています、でも奥様奥様です・・・これからもよろしくお願いいたします」
「こちらこそ・・・夕飯・・・お手伝いしてもいいかしら?」
「いえいえ・・・旦那様に叱られます、料理、洗濯、掃除などの家事はわたしたちの仕事です、どうぞリビングでテレビでもご覧になっていてください」
「でも・・・」
「わたしたちから仕事を奪わないでください」
「・・・はい・・・分かりました」

確かにそうだ、アタシがしゃしゃり出ることによって彼女たちの仕事を奪い、解雇される場合もあるのだ。
アタシとしては彼に、横田さんに手料理を食べて欲しいのだが。

一人の男性にこんな恋心を抱くということは・・・・

アタシは心まで女性化したのかもしれない。

横田さんはサラリーマンが帰宅するように、決まって午後六時に上がってくるらしい。
そして夕食は決って八時となっていた、その時間に合わせてメイドたちは仕度をしている。

玄関のチャイムが鳴った、横田さんの居ないこの住まいでチャイムを鳴らすのは横田さんだけだった。
アタシと二人のメイドは急いで玄関に歩を進める。
そして、アタシがドアーを開けると横田さんが立っていた。
その時アタシの胸は“キュン”となる、愛しい人に出会えた胸の高まりだった。

「待っていたぞ、陽菜・・・もう、どこへもいかせない・・」
の、言葉の後、激しい抱擁、口付け。
アタシの身体は弓反りになり、背の高い彼から上から唇を押し当てられる。

口の中に舌が差し込まれ、アタシの口の中を駆け巡っている。
お互いの唾液を吸い合いながら接吻に酔いしれている、普通の男女の営みだ。
だが、実の所、女のほうは元男であり、最新技術の結果の疑似女性なのだ。
見た目にはそこいらの女の子と違いはない、子供も産めるのだ。
神を冒瀆した人類のエゴ、それもこの人類の中でただ一人男から女に変える技術を持つ一人の医師による性転換。

「むむむ・・・はふぅ・・・」

あまりに激しい口撃にアタシの意識が飛びそうになる。
アタシは接吻だけで逝ってしまいそうになる淫乱な女に成り果ていたのだった。

午後八時、夕食の時間になりメイドに二人部屋を案内されたアタシは席に着き愛しの彼を待っていた。
席に着く前にメイドからぼそっと一言、奥さま、これからは朝は七時、昼は十二時、夜は八時にこの部屋の席に御着きにくださいませ”

メイドでありながら、命令口調の言葉に素直に従っていた。
そして横田さんが席に着き、次々と出される料理を言葉もなく食べていたアタシだった。
勿論、女の子になったアタシは胃袋も小さくなり、男時代のようにたくさんは食べられない。
味を確かめるようにそれぞれの料理を一口ずつ口にしていたのだった。

「あまり食べなかったが体調のほうはいいのか?・・・」
「はい・・・以前のようにたくさん食べられなくって・・」
「そうか・・・なら・・いいが・・・風呂に入ったら寝室のベットで待っていろ・・・仕事を済ませたらすぐに行く・・」
「・・・はい・・・」

待ちに待った一言だった、完璧になったこの身体を、愛しき人によって造られたヴァージンを捧げるのだ。
嬉しさに身震いするとともに、一滴の涙が頬を伝って落ちていく。
そして浴室に入り、禊をするかのように体の隅々まで洗ったのだった。

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megumi2001

Author:megumi2001
仕事・家事・執筆・・・・忙しく動いています
家事は・・・新彼と同棲中・・・・なので
更新、遅れ気味で・・・

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