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麗羅の館ⅩⅠ

第二話:今宮紗希

受験も終わり、東大にも合格した紗希だったが、東大には入学せず、滑り止めで受けた私立の有名校に入った。別に手続きが間に合わなかったわけではない。東大ではなんとなくつまらないと常々思っていた。
周囲はもったいないと口々に言ったが、彼女自身のことだったので、それ以上は問題なかった。
ただ報告を父にするとき、困った。もう何年も会っていなかったのだ。
兄達も同様だったが、あまりの変わり果てた今の姿をどうしようかと、母に相談した。
すると母は、
「心配ないわ・・・ああみえて、お父さん、ちょくちょくあなたを見に行ってたわ」
母の言葉に耳を疑った。いつどこで、という気持ちで一杯だった。

「わたしね・・・おとうさんに、お願いしたの・・・」
その後、母、瑞江は衝撃的な告白を紗希にした。
どうしても女の子が欲しいがため、医者からは危険といわれた四度目の出産を、周りがとめるのも聞かず紗希を産んだのだった。
産む前に夫、浩三と約束したことがあった。
それは、自分は命を掛けるのだから、この子だけは自分の自由に育てさせて欲しいと。
たとえ男の子が生まれても、女の子として育てるとまで。
それがあの幼いころの女装だった。
しかし、この子にはこの子の人生がある。とりあえず、見守ろうと思い直し、紗希の思いどおりにさせたのだった。
髪を切ることを禁じたせいなのか中学生になり自分から女装を始めたことを確認すると、影ながら協力することにした。
また協力していることを知らせるために、整理ダンスを触ったのだった。クリーニングもそうだった。
女性ホルモン投与のときは、知識もなく同意したがその後調べるうちに、いろいろなことが分かり、後悔はしたが、一年もたった後では遅かった。
さらに睾丸摘出のときなどは迷いに迷い、浩三の相談したのだった。
反対するとおもった浩三が、瑞江に任せるといったときには、驚いたがその後、彼も何かと協力的だった。
たとえば、中学、高校と紗希の女装めいた姿を、黙認するよう学校に働きかけたり、衣類などを揃える費用などを工面してくれた。
工面と言うほど金に困っているわけではないが、紗希の女装に関しての金は、浩三の小遣いから出ていた。
整形等の金もしかりだった。
紗希のためのマンションも、浩三が探してきたものだった。
名義もちゃんと紗希のものとし、陰の協力者は浩三その人だった。
なぜこんなに協力してくれるかは分からなかった。
しかし瑞江にしてみれば、金銭的に協力してくれるなら、もっと前面に出ればとも思った。
そのことを彼に聞いたことがあったが、両親が協力したと世間に知られれば、笑いものだと言い放った。
しかし今思い起こせば、彼も女の子が欲しかったのかもしれない。
三人目の子が産まれた時、彼は“また男か”と言ったことを思い出していた。
だからといって、ニューハーフまでとは考えてはいなかったようではある。
しかし、どんな姿でも大学だけはと考え直していた。
そういった意味では、注目度から言えば東大生ではないほうがいいとも思っていた。
美しく変わった息子が、女性に近い姿で自分の前に座っている。複雑な心境だった。
陰ながら協力はしてきたものの、これでよかったのかと。

三人の息子達は勿論、お手伝いも今日はひまを出してある。今この大邸宅には親娘?三人だけだった。
紗希のほうも今日はいつもとはイメージが違う、おとなしいワンピースを着ている。見立ては母だった。
上半身部分はぴったりとした、スカート部分はフレアーの絹製のものだった。
白無地だが胸元まで大きく開いた襟が印象的だった。
そしていつもストッキングなどつけないが、今日だけは、パンティストッキングを穿いていた。
下着も見せるわけではないが、服に合わせて白の高級品をつけ、父と勝負するかのようだった。

最近、紗希は美しく見せる姿勢というものを、日々研究している。
歩く時とか、座っているとき、また電車などを待っているときの立ち姿。
そうしたすべてに美しく見せようとのことだった。研究のせいもあってか自分ではかなり上達したように思われる。今日はその成果を見せるときだった。
ソファに座るときは、背もたれはあるが浅く腰を下ろし、背筋を伸ばし、膝を揃えて脚は斜めにして、足首は極力曲げずに指先だけを床につけるような感じで揃える。
また両手は膝の上で重ねておく。あごは引き、必要に応じては伏せ目にする。などなどだった。
こうした客として招かれるときも、今日は完全な客ではないが、出されたコーヒー、紅茶の類のカップを出されたとき、手にしているハンカチで、飲んだあとカップに残ったルージュのあとをそっと拭く。
飲むたびにこれを行い決して、相手にルージュの後を見せない。こんな小さなことまで研究の対象だった。
父との話もあっけなく終わり、今日は泊まっていけと言う父の薦めにも、着替えを持っていていないからと断った。しかし今後このような機会がありかどうか分からない。父の勧めにしたがっておけばという後悔もあった。
しかし、自分と父の飲んだコーヒーカップを台所に持って行き、綺麗に洗いしばらくの間、両親と談笑した。
これは親娘としてである。堅苦しいことなど考えず、崩した姿ではいたが、そのなかでの美しさは自然に身についていた。

娘となったわが子の後姿を見送りながら、一息ついた後、
「なあ、瑞江、あの子綺麗にはなったが、これでよかったのかねぇ・・」
「・・・そうですね、・・でもあの子が決めたことだから・・・」
「・・・親としては間違っているかもしれないぞ・・・」
「・・そうですね、・・・でも、もう後には戻れませんわ・・」
「そうだな・・」
そんな両親の心配を知ってか知らずか、紗希は父の公認をももらったと内心喜んだ。

東京での住まいは、30階建ての高層高級マンションの20階の一室を、買い与えてくれた。
このセキュリティーも完璧なマンションだったら、おかしなことにはならないだろうという安易な考えだった。
また、アルバイトもしなくていいように、仕送りもかなり高額な金を送っていた。
それに月に一度は母が上京し、様子伺いに来ていた。
この部屋には、男の衣類は一つもなかった。またインテリアも女性の好むものだった。すべて紗希の意向だった。こだわったのが等身大の大鏡だった。あれこれ注文はあった。最後に決めたのは、額縁に入ったものを選び、脱衣所に設置し、曇らないような工夫もした。
また鏡台にもこだわった。いろいろ家具店を回り、100年位前のアンティークなものを、購入した。
母は古いものはすぐ壊れると反対したが、紗希は100年も壊れなかったんだらと、とりあわなかった。
そんな紗希の新生活に費やした金額は普通のサラリーマン家庭にはおよびのつかないほどだった。
今後これ以上の金がかかるかもしれない。
しかし実家は、江戸時代より続いた大豪商で、長崎の出島貿易で巨万の富を手にしていた。
巨額の資金を元での、会社経営は今でも続き、どの関連会社も、黒字で母瑞江の実家も資産家だった。
一人娘の瑞江は5年前に彼女の父から資産を受け継ぎ、そのあとを継いだが今は次男に任せ、自分は顧問にとどまっていた。
長男は浩三の下で帝王学を勉強中である。
学者肌の三男は、母校、東京大学に残り、大学院を経た後、教鞭をとるかたわら、研究に没頭している。
紗希が東大に入らなかったのも、兄がいるせいだったかもしれない。
この一家は代々東大出身者で曽祖父などは、帝国大時代の人だった。
また母瑞江もなぜか東大出身で、紗希だけが違っていたがとりあえず、合格してということは、それだけの頭脳は持ち備えているということだった。

また、浩三はこの東京に数多くのビルを持ち、これを紗希に譲ろうと考えていた。
これなら、たいした人も使わず、経営できると思ってのことだった。
財産贈与的には、兄達の数十分の一くらいにしかならないが、後々の苦労を考えれば、この方が得だった。
すぐ上の兄が今、34歳だから紗希とは一回り以上はなれている。一番上の兄は38歳だった。
母、14歳、中学二年のときの子だった。
というのも、父と母は中学生のとき婚約し、そのときから、一緒に暮らしていた。父は5歳上の高校二年生だった。母が高校に入り16歳の誕生日を迎えたときに入籍したが、すでに2歳の長男がいた。
その当時の母は、相当な美人だったらしい。その面影は今も残っている。
父の上京とともに東京の高校を移り、入籍と同時に次男を出産、大学一年で三男と、青春時代は子育てと勉学で、いそがしい日々を送っていた。
しかし両方とも裕福な実家だったおかげで、子育ての手伝いをしてくれる人を雇い入れることができた。

母瑞江が三男を出産した時には、すでに父、浩三は会社勤めをしており、瑞江はこのときが人生で一番忙しかったと今でもこぼす。
母として子育て、しかも三人、妻として夫の世話、学生として勉学、こんな生活を送っている同年代の女性はいなかった。しかし、お手伝いの女性がいたからこそのことだった。
頻繁に変わるお手伝いの女性の中に、まだ若い子を雇い入れたことがあった。
美人とはいえないがどことなく、愛嬌のある子だった、年は瑞江と同じの20歳だった。
一緒に朝食の支度をしていたときその子の様子がおかしいのに気付いた瑞江は、起きてきた浩三の仕草を観察した。
その子と目をあわせようとしない、いつもと態度の違う浩三に女の直感が働いた。
講義が午後からだったので、浩三を送り出したあと、その子に暇を出した。
その子はきょとんという顔をしていたが、普通はは出さない退職金を渡し、やめてもらうことを告げた。
『こっちの都合でいきなりごめんなさいね』
と低調に詫び、住み込みだった彼女を、その日のうちに家から追い出した。

彼女の住む先は、実家のビルを管理している会社に頼み、空いている部屋に入れてもらった。
管理会社としては、大得意のお嬢さんの言いつけには素直に従うしかなかった。
しかも契約はあとでという理不尽な条件で。
さらに家においてある電話番号をすべて変更した。
まだ携帯電話などない時代だったので、これだけで、二人は連絡をとることはできなかった。
夫の会社など教えてなかったことも幸いした。
後は新しいお手伝いさんを頼むことだけだった。
今度は、年配の人を頼んだ。
その若い子を雇うにしても、自分自身話し相手になれば、位に考えてのことだった。
自分自身の選択ミスだった。
帰宅した浩三は、若いこの代わりに、老婆風の女性がいることに驚いたが、安心した様な顔をしていた。
妻、瑞江への不貞行為に心を悩ましているところだった。
しかし、なじりもせず、後始末だけをきちんとする妻を怖いとも思った。
お嬢様育ちの瑞江のプライドがそのような行動を取らせたのかもしれない。
その後の浩三は、浮気一つしない、理想の夫だった。

大学生として、親元を離れて、といっても紗希はすでに中学生のころから離れているが、東京という大都会で、新生活し始めていた。
5月のゴールデンウイーク、6,7月の梅雨も終わり、夏真っ盛りだった。
学校のほうもすでに休みにお入り、暇をもてあましている紗希だった。
もう変えるところなどなくなった全身だが、また少々の整形をして、その傷跡が癒えるのを待っている状態だった。冷気を効かせているエアコンも東京の蒸し暑さには、効いている様子もない。
裸でいればとも思うのだが、素肌にエアコンの冷気は、身体に悪い。
それに、身体中から流れ出る汗を拭くのも億劫なのだ。仕方なしに、Tシャツは着ているのだが、ノーブラの乳房の間に汗がたまる。
化粧しようものなら、汗ですぐ流れ落ちる。UVカットの落ちにくいファンデーションをつけてはいるのだが、やはりあまり効き目はない。
そうだ、とふと思う。世間が節電、節電と騒ぐからいけない、自分は女王様なのだ。
わたしのすることはすべて許されるのだ、と開き直りエアコンの温度調整を最大にする。
急に部屋中に冷気がたち込め、ひんやりとする。これだ、これだと妙に感心し悦に浸る。
そのとき、据え置きの電話が鳴った。誰だろうと思い、受話器を取った。
最近では練習の甲斐もあってほとんど女と変わらないような声で返事をしてみた。
「た・・紗希か::俺だ・・幸雄だ・・・」
すぐ上の兄だった。最近では、兄達も紗希が女装していることを知り、歓迎はしないものの女性名の紗希と呼んでくれている。
父の援助でニューハーフになった弟を、認めないわけにはいかなかった。
しかしすぐには、紗希という名が出てこないときがある。今がそれだった。
「実は、後一時間くらいしたら、そっちにいきたいんだけど、いいかな?」
「別にいいけど・・・・どうしたの、急に・・・」
「・・・紹介したい人がいるんだ・・・」
「ふ~~ん、・・・兄さんもそういう人ができたんだ・・・」
「・・・・・・ああ、・・・実は・・・いいや、行った時に話す・・・じゃあ後で・・・・」
そういって、電話を切った兄、幸雄だった。
紗希は怪訝な顔をして、受話器を見ていたが、一時間ということを思い出し、あわてて受話器を置き、バスルームに飛びこんだ。
この暑さなら大丈夫と思い、冷水で浴び始めてが、あまりに冷たすぎ、あわてて温水に切り替え、汗をすっかり流した。

エアコンを最大にしたおかげで、風呂上りにはいつもは吹き出てくる汗も、抑えられている。
時間がないのでスキンケアを飛ばそうと思ったが、彼女のホリシーがゆるさなかった。
結局いつもと同じ、時間のかかる顔作りを始めていた。
汗をかきたくないので、服は最後に着ることにした。
ショーツ一枚で、化粧をする姿はあまりにも、無作法であった。
それでも簡単メークではあったが紗希の顔は、一段と美しさを増していた。
ハーフカップのブラのストラップをはずし、寄せてあげての方法で背中のフォックをはめ、春、父の前で着たものと同じデザインの、夏用を選んだ。
隠す部分が乳首のすぐ上までしかないそのワンピースは、そこから腋の下を下がった背中に回り、ウエストラインまで下がっていてブラジャーの背中部分を丸見えにしていた。
大きく開いた背中にブラジャーを見せるわけにはいかない。
紗希はすぐさま、ブラジャーを取り外した。
紗希の乳首は生地で擦れて、感じやすくなっていたが、この方が自然だった。
背中まるだしのこのワンピースのストラップを背中でクロスさせた。
また、前のほうは、乳首をわずかに隠した後、中央に行くにしたがって下がり、乳房さえもわずかに隠す程度だった。
コルセット内蔵のようなこのワンピースはどうやら、パーティードレスだった。
きつく締められたこのドレスは、ウエストを50cmくらいにしていた。
スカート部分も春物とは違い、フレアーではなく、マイクロタイトミニだった。
これじゃあまずいと思い、服を変えようとクローゼットに向かおうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。
紗希はしまったと思った。
兄には、エントランスのほうの暗証番号を教えてあったのだ。
仕方なく玄関ドアーをあけると、兄の姿があった。
幸雄は、紗希の姿を見るなり、
「なんだ、おまえ、その格好は・・」
「だって・・・おかあさまの見立てで、春買ったんだけど、着たらこんなんだから・・・着替えるから、ちょっとまって・・・」
「いいよ、そのままで・・」
「・・・でも・・・」
「いいから、いいから・・・実は紗希に頼みたいことがあるんだ・・・」
珍しいことがあるもんだと、紗希は怪訝な顔をした。
父浩三は紗希のことを三人の兄達に話していた。
そのとき、上二人の兄はおおむね了解してくれたが、この兄だけは、世間に恥ずかしいだの、自分の立場がどうのこうのとうるさく反対していた。
その兄が自分に、頼みごととは。
ただ、ここ最近よく紗希の部屋を訪れている。

「・・・おい、はいれよ・・・」
幸雄の言葉に、ひとりの少女が顔を出した。その顔を見て驚いた。早紀だった。
「お前も、知ってるだろう、こいつ・・」
「う・・・うん」
「・・今、俺達付き合っているんだ・・・」
「えっ・・・・・・」
「で、頼みとは、こいつを女にしてくれ・・・」

いつの間にか、幸雄と早紀は、応接室のソファに腰を下ろしていた。
指折り数えて会ったのは、9ヶ月前だった。
それ以来だった。髪も伸び、肩にかかるほどだった。
前髪も切らずに、真ん中分けをしているせいか、時折、左手で掻き揚げている。
「・・・いつから・・・付き合ってるの・・」
「去年のクリスマス・・・」
「・・・・早紀ちゃん、先生は?」
「・・・・・・分かれた・・・」
ぽつぽつと話し始めた早紀だった。

昨年、紗希の出現、また、紗希から送られた、女装用品により、鮫島は女装に目覚め、早紀と会っているより自分を変えることに夢中になっていった。

あの日の翌日、彼は細くなった眉のまま学校にいったのだった。
また、瞬間接着剤で二重にしたが、その方法で、毎日二重にし女装にふけるようになっていた。
勿論、眉などは抜いてしまったので、生えてくるのを待つしかないが、二重により雰囲気が変わった鮫島の姿に、校長、教頭などは眉をひそめた。

鬼監督として威厳のあった野球部の選手にも、やさしくなったその顔では、威厳も保てなくなっていった。
また、女性ホルモンを投与し始めたせいで、身体の線も丸くなっていった。
もちろん、ホルモン投与がそんなに早く効くはずもないのだが、そういった噂が立つと、周りの目はそんな風に感じるのだ。
早紀に会っても、彼を抱くこともなくなった。
確かに、強力な女性ホルモンを頻繁に一ヶ月もつづければ、性欲はなくなる。
そんな周りの目や噂のせいで、学校を二学期一杯で辞めてしまった。

ほっておかれ始めた早紀は、相談のため紗希のところに来たのだが、別のマンションで暮らしている彼女とは会えなかった。
そんな時たまたま帰省していた、幸雄が応対に出ていたのだ。
紗希にもらった鬘をつけ女装していた早紀を、幸雄は男とは気づかず、そのとき一目惚れしてしまったのだ。
紗希のいないことをつげ、連絡先として住所や電話番号を聞いていた幸雄は、帰省中たびたび早紀に連絡していた。
そのときは、早紀がまだ中学生とは知らずにいた。
たしかに女装しているときは、化粧をしているので大人びて見えるのは確かだった。

大学の長い休みは、早紀にアタックするにはちょうどよかった。
そして、早紀に更なる悲劇が起こったのだ。
両親が交通事故で亡くなったのだ。
孤児院育ちの両親に身寄りはなく、一人っ子だった早紀は途方にくれた。
そのとき相談に乗ってくれたのが幸雄だった。
そして、その葬儀のとき初めて、早紀が男と気付いたのだった。
しかし、女性と付き合った経験のない幸雄の片思いは、さらに加速し、女装すれば美人に変わる早紀を異性として愛していた。
また14歳と知っても、一向にひるまなかった。
すでに年は変わっていたが、三学期一杯は田舎の中学で過ごさせ、新学期を期に自分の住む東京の有名私立中学に、転校させた。
学校側も、身元引受人が東大の助教授だったら、拒む理由もない。
二つ返事で転校を認めたのだった。
また早紀の成績が大変優秀だったことも転校許可の要因の一つだった。
さらに、早紀が女性ホルモンの投与を希望したため、医学部の友人にそのことを頼んだのだった。
他には内緒で都合してくる友人への謝礼も、一週間毎になっている。
幸雄は友人の注意に従いながら、彼自身が早紀に投与していた。

そんな投与もすでに、半年になっていた。
そのせいか早紀の乳房はいまではふっくらとし、思春期の少女くらいになっていた。
まだどうしてもブラジャーが必要というわけではないが、学校に通うとき以外は、紗希にもらった人工乳房をとともに、ブラジャーを付けていた。
いまは軽いナチュラルメークのせいで、歳相応に見える。
着ているものも、デニム地のマイクロミニにTシャツだった。
そのTシャツも汗で身体に張り付き、ブラジャーの姿を浮き立たせていた。こんな暑い日に人工乳房は、熱いだろう。

一応のことを聞き終えた紗希は、
「・・・で、あたしにどうしろと・・・・・」
「・・・実は・・な・・来年、女子高に入れようとおもっているんだ・・・」
紗希の目は点になった。
「なに、訳わかんないこと、いってんの・・」
「だめか?・・」
「・・・う~~ん」
しばらく考え込んでいた紗希は、こうきりだした。
「・・・なんか面白そうな話しだなぁ・・・」
幸雄はむっとして、
「本気なんだぜ、俺達・・・・茶化してないで真剣に考えろ・・・」
「ごめん、そんな気はないんだけど・・・で、どんな方法をとるつもり?」
「まだ考えてない・・・」
「・・・・あ~~あ、兄貴はいつもそうなんだもん・・」
「そう言うなって・・・入れる学校のあてはあるんだが・・」
「女子高の?」
「もちろん・・・早紀も、もう女として生きていきたいっていってるもんだから・・・・」
「早紀ちゃん、本当にいいのね?」
「・・・はい、わたし、紗希お姉さまみたいに生きたいの・・」
「でも、子供、産めないよ・・」
「分かっています、幸雄さんには申し訳ないけど・・」
「俺のことなんかいいんだ・・・」
「あらあら、ごちそうさま、・・・だけど、どうしようかな・・・」

考えに行き詰った紗希は、とりあえず、一部始終を聞いてみようと思った。
幸雄の友人に、こんな悪友めいた人が多いが、親が女子高を運営をしているものがいる。
その友人の伝手で入れようと思っている。しかし、試験はないが面接はあり、それをまずクリアすることだった。
さらに、女装させることはまだ伝えてなし、これからも白状するつもりはない。
つまり、早紀は女の子として入学し女性として高校生活を送りたいと思っている。かなり虫のいい話だった。
とにかく、早紀と同居することにした。今、早紀は幸雄と暮らしている。
とりあえず、必要なものはないので、このまま残ることにした。
幸雄は紗希に頼むと言い残しかえっていった。不安そうに見送る早紀を紗希は、
「二人ともサキじゃあこんがらない?」
「そうですね、・・・じゃあ、あたし・・・沙羅にします」
「いいの、それで・・・」
「いいんです、・・・どうせ、鮫島先生が、紗希お姉さまのことを忘れられずに、つけた名前ですから・・・幸雄さんともこの名前にしようと話し合っていたところですから・・」
「・・・・そういえば、鮫島先生、どうしてるかな・・・学校辞めちゃって・・・」
「・・・ゲイバーで働いてます・・・」
「・・・あの身体じゃあ、そんなとこかな・・・」
「うふふ・・・随分ひどい言い方ですね・・・でも、あたしも同感・・・」
「でしょ、でしょ・・・あはは・・・」

プロフィール

megumi2001

Author:megumi2001
仕事・家事・執筆・・・・忙しく動いています
家事は・・・新彼と同棲中・・・・なので
更新、遅れ気味で・・・

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