第三話:今泉陽菜
12浴室に入った二人は三十分ほどで出てきた、そして俺は彼女に異変を感じた。
よくよく見れば彼女は全身脱毛されたようだ、もともとあまり毛深くなかった彼女はさらに無駄毛がなくなり、まるで女の子のような綺麗な脚を晒していた。
その綺麗な脚にピンク地の可愛らしいショーツを通し、穿かせている。
股間の膨らみが気になるが、まるで少女の下半身を見ているようだった。
さらに紗希は彼女にブラジャーを付けようとしていた、だが紗希の持ってきたブラはサイズが違いすぎたようだ。
苦悩の末、紗希はこう言い残して部屋を出ていった。
「ちょと買い物してくるから、洋一さんの髭、抜いておいて・・」その言葉に俺はギョッとした、
『なんだぁ、俺の髭を…』俺はその紗希の言いつけから俺を女装させようとする意図を感じたのだった。
俺は何故かわくわくしながら、彼女・早紀のされるがままになっていた。
早紀の膝を枕にチクチクとする痛みを楽しんでいた、早紀の柔らかい膝の感触を楽しみながら。
一時間ほどして、戻った紗希は大量の買い物をしてきた、だが俺の髭はまだすべて抜き終えていなかった。
男としてはそんなに毛深くない俺だが、それでも毛根が太くなった成人男性である俺の髭は一時間くらいでは抜き終えない。
紗希はそのまま早紀に俺の髭を抜かせておいて、ビニールシートを敷きその上に俺を横たえさせた。
仰向けに寝た俺の顔に覆いかぶさるようにして早紀は俺の髭を抜いていた。
紗希は投げ出された俺の足のほうにいて、俺のすね毛を脱毛し始めたのだった。
はさみで一定の長さに切りそろえたあと、そこに脱毛フォームを塗り、数分後に濡れたタオルでふき取る。
するとそこだけ綺麗な無毛状態になっていた。
そんなことの繰り返しで俺の足は、二時間もすると女性のように綺麗になっていた。
そのころには髭のほうも抜き終わり、いつもは青い髭剃り跡が目立つ俺の顔はそのあとさえない綺麗なものになっていた。
両腕をあげさせられ、腋毛も早紀に抜かれている間、紗希は俺の眉の毛を整えていた。
あらかじめ、ラインを書き、外れたころの毛を抜いている。
また二時間ほどかかり、できあがった俺の顔を鏡でるよう催促した。そして、俺は、
「げっ、・・・これじゃあ、学校に行けないよ・・・」といっていたが、次に何をされるのか分かっているので心ならずも微笑んでしまっていた。
紗希は俺を東南アジア系の女性のようなメイクをし始めた、俺の顔は日焼けで黒くなりすぎていてドーランなどでは隠し切れないほどだった。
まずカラーコンタクトを装着し、ファンデなどを塗りながら女へと仕上げていく、勿論普通の女性のメイクなどとは違う、時間と手間をかけ入念に女性らしい顔に仕上げていくのだった。
自分で言うのもなんだが、イケメンの俺の出来栄えはそれなりの美女に仕上がっていた。
だが俺自身納得のいかないところも数々あった、その一つは股間の膨らみだった、それを紗希はタックという手法で消し去ったのだ。
タックで股間の膨らみを消した俺と早紀にショーツとブラジャーをつけさせた紗希は俺達を見ていた。
俺はともかく、早紀のほうはかなり少女っぽくになっている。
紗希の見立てもよく、下着のサイズも俺達にはぴったりだった。
そしてどこから持ってきたのか人工乳房に接着剤を塗り、俺達の胸に装着したのだった。
それは本物と間違えるほどの柔らかさを持ち、付けたに俺達もその重さを感じられるものだった。
すでに興奮している俺達は、陽根を勃起させている、人工ではあるが乳房の重みに興奮しているのだ。
早紀はおろか俺まで興奮し、俺たちの陽根は折りたたまれたまま小さなショーツに隠れている。
そして、パンストを穿かされ、さらに下着代わりにキャミソールをつけさせられる。
スカートは俺が、膝上10cmのタイト、早紀は、赤のレザーのマイクロミニ。
アウターのほうは肩幅の広い俺は首周りが広いセーター、早紀は可愛い花柄のはいったピンク地のブラウスだった。
あとは鬘だった。
俺はソバージュのかかったロング、早紀は紗希と同じ背中の真ん中までのロングだった。
早紀はもともと可愛い顔立ちだったので、想像はついていたが、俺のほうは瞼を強力な瞬間接着剤で二重にしたので、それなりの美女に出来上がっていた。
だが、早紀は160cmと小柄だが俺の180cmを超える身長は女装者を丸出しにしていた。でも今日だけだからと紗希もあきらめていたようだった。
身支度を終えた俺達三人は町の繁華街に向かっていた。もう夕方で薄暗くなり始めている。
俺はハーフロングのコート、早紀はデニム地のジャケットだった。
靴も紗希の見立てだったが早紀のほうはやや高いパンプスを、俺には紗希の悪戯心が湧いたらしく10cmのハイヒールだった。
身長が高い上に更なるハイヒールで190cmを越える大女、ニューハーフになっていた。
こつこつとパンプスの音がまばらになっている。ときどき、ガーという音も聞こえる。
俺の足の運びが悪いときに鳴らす音だ、しかし、こんな大きなサイズの靴などあったものだと、俺は思った。
また洋服にしても同じだった。通常ここまで大きいものはないと思う。
というのも、俺は心のうちで自分も女装はしてみたいと思っていたが、買うときの恥ずかしさとサイズがない、の両方のため半ば、あきらめていた。
しかし、こうして今女装してみると、その心地よさは格別で病み付きになりそうだった。
だから今外出していることが俺は嬉しくてたまらなかった。
今、俺が身に着けているものが揃えられているのには訳があった。実は、紗希が持ってきたものだった。
紗希も付き合っているころから、一度は俺に女装をさせようと思っていたらしい。
そのころから集めたもので、彼女の部屋にはまだまだたくさん置いてあるみたいだ。
だが早紀の場合は、突然だったが、このくらいのサイズのものを、揃えるのにそんなの苦労はしない。
また鬘は、紗希が何かあったときのため、常に持ち歩いているもので、こんな風に使うとは思っていなかった。
駅を中心とした繁華街は、土曜日と言うこともあって人が出ていた。
その中を背の大きな女性が歩いている、当然視線は俺のほうに向いてくる。
あまりじろじろ見られるのも嫌だったし食事もまだってこともあったので、どこかにはいることにした。
ちょうど手ごろなところににファミリーレストランがあったが、俺が人の多いところはいやだと言い出したので、しかたなく、裏通りの高そうなレストランに入ることにした。
そこは照明は薄暗く、俺みたいな女装者にはちょうどいい。
店に入り紗希が自分のオーダーを選び、メニューを早紀に渡した。しかし早紀はメニューを開こうともしない。
紗希がどうしたのかと聞くと、
『ルージュが落ちるから・・・』という理由だった。紗希は後で直し方を教えるからと悟し、注文するように言った。
「博美は・・・」俺はこう呼んでくれと頼んでいた。“博美”は初恋の女性だと言ったが本当は母親の名だ、とっさに出てきた名前が母の名だったのだ。
「わたしは・・・・☓○△・・・」 俺の女言葉はまだ様になっていないが、なんとか女性らしくしようとしている自分ながらいじらしい。
一方早紀のほうは、他人の目が気になるらしくうつむいたままだった。
紗希と俺はたわいもない会話をしながら、食事を取っていたが、ぽつぽつと早紀のほうも話に入ってくるようになっていた。
紗希は俺に服のことを話すと、俺はやはりという顔をし、さらに残りも欲しいと言い出した。
俺の注文にあっけにとられた紗希だったがサイズ違いの服が自分のところに合っても仕方ないと思ったらしく、送ることを約束したのだった。
その夜は紗希は泊まることになった。そうなると早紀のほうも、泊まると言い出したのだ。
紗希も別に淫行が目的ではないので、いやな顔もしなかった。
俺はこの日の時をきっかけに女装、いや女の身体を追い求めるようになったのだった。