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麗羅の館Ⅱ

第一話:友永陽子

麗羅は、ぽつぽつと二人に質問し始めていた。
彼女たちは、母親の名は、友永麻美。少女らしきその子は通称、陽子といった。
通称というのも陽子がまだ三歳のとき、麻美の不注意で事故にあい、二つの睾丸を除去していた。
それが原因で夫と不仲になり、離婚したのだった。
しかしその夫も陽子が5歳の時、交通事故に遇いその保険金が陽子のものになったが、それを運用して麻美が事業を始め、いまでは実業家として成功はした。しかし、麻美の心の中にはどうしても陽子にすまない気でたまらなかった。
陽子のほうは、幼いころのことで覚えておらず、毎日着せ替え人形のように可愛い女の子の服を着させてもらえるのをうれしく思っていた。ただ最近になって、自分が普通の女の子ではないことに気ずいたしまった。
それは麻美にとって、耐えられないことで、何とかしようと思っていたところ、“麗羅の館”のことを、さる知人に聞いたのだった。
麻美もまだ若い。18歳で結婚、19歳で陽子を出産、いま女ざかりの30である。お世辞にも美人とはいえない。だが、事業に成功したといえ、着飾ってもおらず奢ったところもなかった。ただ陽子のことを思いやる普通の母親だった。
そのあたりが、麗羅も裕美も好感が持て、熱心に聞き入っていた。そして、どうせ男としては、もう生きていけないのだから、せめて、外見だけでも女として、という麻美の考えに何とかしようという気に、ならずにはいられなかった。

聞き終えた麗羅は彼女らに、一つの質問をした。
「あなた方は、ただ外見が女性に見えるようにしたいのか、完璧な女性、出産も可能な女性をお望みですか」
「???・・どういうことですか・?」
「・・・つまり・・・」

麗羅は説明しはじめた。
ただ単にふつうの性転換手術を行いニューハーフとしての女性化なのか、出産が可能な完全な女性を望んでいるのか、後者の場合は医者の診断書のもと、裁判所に性の変更を申し出て、戸籍を変えるという手間暇がかかることになるが。しかしこれは、各方面から奇異な目で見られ、あるいはマスコミにかぎつけられるかもしれないという危険もはらんでいる。
そんな麗羅の言葉にも、麻美の目は急に輝きはじめ、
「完全な女になれるのですか・・・??・・あのう、生理や妊娠、出産も・・」
「もちろんです。でもそれには・・・」
「どんなことがあってもいいです。この子が人間として当たり前の生活ができるなら、わたしはどんなことでもします。どんなことをしてでも、この子を守ります。お願いします、どうか、この子を女性にしてください」
そんな麻美の決意に麗羅も決断するしかなかった。

その場にいた四人は、いまパソコンをのぞきこんでいる。変化させる顔を決めているのだ。今の陽子は、母親似か、お世辞にも可愛いとはいえない。だからまず顔からはじめに決めようということになった。あれやこれや、注文を出す麻美、それに反論する陽子、少々いらだちはじめた麗羅だったが、なるべく注文どおりにしようと思い、キーボードやマウスを駆使していた。あれやこらやの論争の末、きまったのは、やはり今人気のアイドルに酷似した顔だった。
あと、身長や体重の測定などを行い、身体に見合ったスタイルを決めることになったが、麗羅は11歳に見合ったスタイルを薦めたが、麻美たちはやや胸の大きい、いわば早熟さを選んだ。これにより、身長はやや小さめではあるがスタイルがよく胸の大きい少女ができることになる。
ここにいたるまでに、3時間ほどの時間を費やした。あとは、自然なスタイルに変更するだけだったが、これは一日もあればできる。とりあえず、今日はかえってもらうことにした。

それから一週間の間、麗羅は3階にあるっ研究室にこもままだった。その間、裕美は泊り込んで、食事などの世話をしていた。大抵、患者がくると、こうした作業をいつもしていた。また、作業を効率よくさせるため、麗羅は妹の裕美を呼んでいた。

一週間、部屋にこもりっきりだった麗羅がやっと部屋から出てきた。かなりやつれていたが、満足そうな顔をしていた。
こういうときは、自弁の納得のいく物ができたことを意味する。
化粧気のない顔に満面の笑みを浮かべながら、
「裕美ちゃん、クランケに連絡して・・」
「はい、お姉さま」
このときが、裕美にとっても最高の気分になる。そして、電話する声も弾んだものになる。ほどなく、末永親子が来館してきた。彼女らも心なしか浮かれたような顔をしている。そして、
「わたし達、引っ越したんですよ・・・」
「そ、そうなんですか」
裕美は、驚いたように返答したが、実のことろ、電話番号が変わったことを告げられたときに、このことは察していた。
麻美は目を輝かせながら、嬉々として話し始めていた。
ナチュラルメークにグロスを塗っただけだろうとおもわれるほどの控えめな化粧に、ベージュのワンピースに同色のブレザーというファッションからは女性実業家にはとても見えなかった。
また、陽子の服装は、やや大人びていて、有名女子高の制服を模倣したブレザーに、チェック柄のミニスカートだった。髪も長く伸ばし前髪を顔一杯に伸ばし、それを中央わけしていた。背中の真ん中まで伸びた髪の先は内側にカールさせ、眉も細く手入れしてあった。軽い化粧は顔の容姿とは別に、それはそれで大人を感じ、とても十一歳の男の子とは誰も思わないだろう。時折髪を掻き揚げる指の先は、マニュキュアで彩られていた。

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Author:megumi2001
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